今を疑う
これまでの実践の経験から、フューチャー・デザインのワークショップにおいて討議参加者たちが将来の姿についての独創的なアイデアを発想する場合、そのような発想は現在の社会のありようを何らかの形で反転させることで実現することが分かってきました[1]。
このことは、京都府宇治市における仮想将来人を経験した方々への事後的なインタビュー調査でも裏付けられており、紙芝居作品としてもまとめられています。
さらにこれは、先行研究において逆説的思考(paradoxical thinking)と呼ばれてきた創造的な思考法にも通じる考え方です[2]。
そこで、本研究所では、このような思考法を積極的に促す手法を取り入れたフューチャー・デザインの実践も行っています。
具体的には、仮想将来人として将来の姿を描くのに先立ち、現在の社会において当たり前と思われている事柄を相対化するというトレーニング手法を採用しています。
なお、この作業は現代人の目線のまま行う場合と、仮想将来人になりきった上で行う場合とがあり、どちらのほうが、より独創的なアイデアの創出につながるかについては、今後の学術研究の結果を待たねばなりません。
(文責:中川善典)
参考文献:
[1] Nakagawa, Y. (2020). Taking a Future Generation’s Perspective as a Facilitator of Insight Problem-Solving: Sustainable Water Supply Management. Sustainability 2020, 12(3), 1000.
[2] Westenholz, A. Paradoxical thinking and change in the frame of reference. Organ. Stud. 1993, 14, 37–58.