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フューチャー・デザイン
実践における原則

ワークショップ:フューチャー・デザイン実践における原則について

本研究所が自治体様等の組織におけるフューチャー・デザインの実践をサポーターとしてお手伝いする場合、大事にしている原則が幾つかあります。
以下の文章において「担当者」とは、自治体様等の組織においてフューチャー・デザインを実践する中心となる方を指します。その方は、本研究所とその組織との連絡の窓口役でもあります。

(1)「証拠に基づく手法選択」原則

原則:フューチャー・デザインは生まれたばかりの活動であり、本研究所では新しい手法も次々と生み出しています。
それらを自治体様等の組織において使用していただく場合、効果が未検証の手法を実践で直接使うのではなく、あらかじめ実験室などで検証することとしています。
また、効果が未検証の手法を使用する場合は、そのことをお示しするとともに、その手法がどのようなメリットとデメリットとを持ちうるのかをご説明した上で、担当者様にその選択を委ねることとしています。


(文責:西條辰義・中川善典)

 

本研究所がフューチャー・デザインの実践をサポートさせていただく場合、原則として西條と中川とがセットでサポートをする体制をとります。
これにより、ワークショップのデザインにおいて、研究者同士でも様々な論点において意見が異なり得ることを依頼者側の担当者様にお示しした上で、担当者様に納得いただけるようなデザインへと意見を収束させることが可能になります。
こうして、広い意味で「証拠に基づく手法選択」原則が満たされることになります。


(文責:中川善典)

 

(2)「批判的公開性」原則

:(All actions having relations to the rights of other men, whose maxims do not allow publicity, are unjust.)
これはカントが『Perpetual Peace』の中で述べた原則です[1]。
私の訳は「他者の様々な権利に関わり合いのあるあらゆる行動は、その行動原則が公開性を満たしていないのなら、不正である」。これから必然的に、「情報の公開性」、参加者(研究者と担当者)の「対等性」が出てきます。

批判的公開性

(2)a 「情報の公開性」原則

情報の公開性とは、関係するすべての主体が他のすべての主体と双方向で情報が共有される形態です。メールなら常にすべての者がメーリングリストに入っている状態。
一方で、これ以外の情報の交換の仕方は情報の公開性を満たさないことになります。
特に、情報の集中とは、ある特定の者(複数を含む)がハブとなり、情報がその者経由でないと他者に伝わらないネットワークの形態。
例えば、ある特定の者がハブとなり、担当者を省き研究者のみのメールの交換・会合などを主導する場面があるなど、ハブになる人を認める手法だった場合は以下の対等性を満たしていないことになります。

(2)b「対等性」原則

研究者(複数)と担当者(複数)が対等の立場で参加するという要請です。
たとえば、松本市の場合は、研究者がそこに住んで居ますが、他の地域では研究者はそのプロジェクトが終わるとその地から離れることになります。
そのため、対等性とはいっても、担当者のほうにウェイトを置くのがよいと考えています。
つまり、研究者が主導することを拒否する原則です。
主導とはある者が議長になったり、議論を仕切ったりし、意思決定をリードすることなどなどです。


(文責:西條辰義)

(3)「当事者」原則

実践のワークショップでは、研究者はサポーターの役割に徹し、担当者が意思決定をするという原則。
実践では担当者が実施し、研究者が実践の場で何らかの役割を果たすことがあってはいけないという原則。
さらには、フューチャー・デザイン実践のあらゆる局面で研究者が強制・誘導する場面があってはならないという原則。


 (文責:西條辰義)

(4)「消去(Fade away)」原則

研究者や外部者がある場所で、様々なステークホルダーを含む市民をサポートする場合、サポートがなくても、市民の皆さんが実践できるようにする原則。
つまり、サポーターは将来完全撤退をすることを前提にサポートするという原則。
上の(3)は当該原則から導出されます。


(文責:西條辰義)

(5)「外部の目」原則

フューチャー・デザインのノウハウを持った研究者や実務者が、依頼者の委託を受けてその依頼者の実施するフューチャー・デザインのサポーターの役割を果たす場合、そのサポーターは、仕組みのデザイン、実践、実践のアウトプットに関して、外部の目による批判的評価にさらされなければならないという原則。
ここで、外部とは、当該サポーター以外の専門家や、依頼者のステークホルダーを指し、依頼者が行政の場合は、市民がその候補となります。


(文責:西條辰義)


参考文献:

[1] Kant, I. Perpetual Peace: A Philosophic Essay, 1795, translated by Benjamin F. Trueblood, The American Peace Society, 1897, p.46.



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